加齢に負けない!自律神経を整える健康習慣
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年齢を重ねても「健康で生き生きとした体」を維持するカギの一つが、自律神経のケアです。自律神経とは、私たちの意思とは無関係に体の状態をちょうど良く保ってくれる神経のこと。日中は交感神経が優位になって活動モードに、夜は副交感神経が優位になってリラックスモードに切り替わり、ぐっすり眠れるように働きます。ところが生活習慣やストレスの影響でこのバランスが乱れると、心身に様々な不調が現れてしまいます。今回は自律神経とは何かをおさらいし、日常で実践できる生活習慣・食生活・メンタルケア・運動のポイントをまとめました。自律神経を整えて、加齢に負けない元気な毎日を目指しましょう。
自律神経とは?乱れるとどうなる?
自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなり、体を自動的にコントロールしています。交感神経は心拍数や血圧を上げて体をアクティブにする働きがあり、副交感神経は逆に脈拍を落としリラックスさせる働きがあります。この2つが上手にスイッチすることで、私たちの体調は安定しています。
しかし自律神経のバランスが乱れると、さまざまな不調につながります。メンタル面では不安感、睡眠不足によるイライラや情緒不安定などが起こりやすく、身体面でも頭痛、動悸、めまい、肩こり、便秘、肌荒れ、慢性的な疲労感や倦怠感など枚挙にいとまがありません。自律神経の乱れが長引くと、免疫力の低下から深刻な病気(場合によってはガンなど)を招いたり、ホルモンバランスの乱れによって抜け毛・薄毛の一因となる可能性も指摘されています。主な原因はストレス(しかもその9割は人間関係によると言われます)、不規則な生活習慣、そして加齢です。
では、なぜ生活習慣の乱れやストレスが自律神経に悪い影響を与えるのでしょうか? ポイントの一つは体内時計です。私たちの体内時計が交感神経と副交感神経の切り替えスイッチを司っていますが、寝る時間・起きる時間や食事の時間がバラバラだと体内時計が狂い、自律神経もうまく切り替わらなくなります。また睡眠不足も大敵です。睡眠が不足すると副交感神経の働きが低下し、交感神経が優位な緊張状態が続いてしまいます。研究によれば睡眠不足は交感神経を過度に高ぶらせ、副交感神経の働きを低下させると報告されています 。実際、質の良い睡眠をとるためには就寝前の照明を暗くしたり体温を少し下げておくことが有効です。寝る約2時間前に40℃前後のお湯に肩まで5分・その後は半身浴で10分ほどつかると、血管が拡張してリラックスモードに切り替わり、寝付きが良くなります。サウナや湯船によく浸かる人は血流が良く、自律神経も整いやすいと言われます。
ストレス、とくに怒りや不安などの負の感情も自律神経を乱す大きな要因です。強いストレスを感じると交感神経が一気に優位になり、その状態が続くと自律神経は休まる暇がありません。しかも負の感情は周囲にも伝染します。周りのイライラした空気に当てられて自分の交感神経も高ぶり、さらにストレスを感じる……という悪循環も起こり得ます。短気を起こしたり怒りっぽい言動も交感神経を過剰に刺激するため、自律神経には良くありません。逆に自律神経のバランスが整ってリラックスできている人は、肌や髪にツヤが出るなど見た目にも良い変化が現れます。「結局、自律神経が整えばすべてうまくいく」と言われるゆえんですね。
では、乱れがちな自律神経を安定させるには具体的にどんなことをすればよいでしょうか。生活習慣・食生活・メンタルケア・運動という観点から、今日から実践できるポイントを見ていきましょう。
自律神経を整える生活習慣
まずは毎日の生活リズムを見直すことから始めましょう。規則正しい生活は自律神経安定の基本です。「早寝早起き」を心がけ、特に朝の過ごし方を工夫するだけでも一日が快調に回り始めます。また夜のリラックス習慣も大切です。以下のような生活習慣を意識してみましょう。
- 朝のルーティンを整える: いつもより少し早めに(目安として30分)起床し、布団の中やベッドの横で軽いストレッチをして体を目覚めさせます。起きたらまず朝日を浴びて体内時計をリセットし、コップ一杯の水をゆっくり飲みましょう。その後、朝食をしっかりとりますが、焦らずゆっくり噛んで味わうことがポイントです。朝に水を飲むことで眠っている腸が刺激され、副交感神経にもスイッチが入ります。腸の動きが良くなると全身の血流も改善し、自律神経の働きが高まります。
- 夜ぐっすり眠るための習慣: 質の良い睡眠のために、夜は就寝時間をできるだけ一定にし、寝る3時間前までには夕食を済ませておきます。寝る直前に胃腸が活発だと交感神経が優位になり眠りが浅くなるためです。どうしても睡眠時間が確保できない日が続いたら、意識的に「睡眠負債を返す日」を作ることも大切です。
- 入浴でリラックス: 就寝の2時間ほど前にぬるめ(39~40℃程度)のお湯にゆっくり浸かる習慣をつけましょう。最初の5分程度は肩まで湯船に浸かり、その後は胸から下の半身浴で合計15分ほど温まります。体が芯からリラックスすると副交感神経が優位になり、スムーズに睡眠モードへ移行できます。入浴中は照明を落としてリラックス音楽を流すのもおすすめです。
- アルコールや喫煙を控えめに: タバコは交感神経を刺激してしまうため、自律神経の安定には禁煙・節煙が望ましいです。またお酒も飲みすぎは禁物。適量のアルコールは一時的に気分をほぐし副交感神経を高めることもありますが、量が過ぎると睡眠の質を下げて自律神経を乱します。どうしても飲みたいときは早めの時間に少量だけにとどめ、アルコール1杯に対してコップ1杯以上の水を併せて飲みましょう。おつまみ(ナッツやチーズ、枝豆などタンパク質を含むもの)を一緒に摂って胃腸を保護することも忘れずに。
- 寝る前のスマホ断ち: 就寝30分前になったらスマートフォンやパソコンなど画面を見るのをやめましょう。強い光や情報の刺激は交感神経を興奮させ、寝つきを悪くします。寝る前は照明も少し落として、静かな環境でストレッチをしたり読書をしたりと心と体を落ち着ける時間に充てます。
- 適度な運動習慣: 日中に15~30分程度のウォーキングなど軽い有酸素運動を取り入れると、交感神経と副交感神経のメリハリがつきやすくなります。特に夕食後のゆったりした散歩は副交感神経を高め、消化も促進されて一石二鳥です。朝の通勤・通学時に一駅分歩く、買い物は歩いて行くなど日常に組み込む形でもOKです。運動については後述しますが、要は**「疲れたから何もしない」ではなく「疲れているときこそ軽く体を動かす」**のがポイントです。日中に適度に体を動かしておくことで夜はかえって深く休むことができ、結果として自律神経のリズムが整います。
- 不安を減らす工夫: 明日や近い将来の心配事で頭がいっぱいになってしまうときは、事前にできる準備をして不安の種を取り除いておきましょう。たとえば大事なプレゼン前なら資料を早めに整える、旅行前に持ち物リストを作る…といった具合に、先手を打っておくと安心感が生まれます。「これで大丈夫」と思える材料を用意しておくことが、ストレス軽減につながり結果的に自律神経の安定に役立ちます。
- 香りの力を利用する: リラックス効果のあるアロマを生活に取り入れるのもおすすめです。特にラベンダーの香りにはリラックス作用があり、副交感神経を優位にしてくれると言われます。就寝前にアロマディフューザーで焚いたり、ハンカチに精油を一滴垂らして枕元に置いたりして、香りの力で穏やかな眠りを誘いましょう。
- 深呼吸でスイッチを切り替える: 自律神経のバランス回復に手軽で効果的なのが呼吸法です。特に「息を長く吐く」呼吸をすると副交感神経が働きやすくなります 。1日に1回でも良いので時間をとり、鼻から3~4秒かけてゆっくり息を吸い、口をすぼめて6~8秒かけて息を吐く深呼吸を3分ほど繰り返してみましょう。お腹に手を当て、吸うときにお腹が膨らみ吐くときにへこむのを感じながら行うと効果的です。ゆったりした呼吸は迷走神経を刺激し、体に「リラックスして大丈夫だよ」という信号を送ってくれます 。
自律神経を整える食生活と腸内環境
毎日の食事も自律神経に大きく影響します。特にポイントになるのが腸内環境です。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、実は幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの95%が腸で作られています 。さらに体の免疫細胞の約70%が腸に集まっているとも言われ、腸内環境が乱れると全身の不調や病気につながりかねません 。自律神経と腸はお互いに影響し合う関係で、脳が感じた強いストレスが腸の動きを悪くし、逆に腸の不調がメンタルに影響を与えるという「腸脳相関」も明らかになっています。腸内環境を良くすることは、自律神経を整える土台になるのです。
では具体的にどんな食生活を心がければ良いでしょうか。食事のリズムや内容について以下に整理しました。
- 規則正しい食事リズム: 腸を常に安定して働かせるには、1日3食をできるだけ決まった時間にとることが大切です。食事と食事の間隔はおよそ5~6時間あけ、空腹の時間と消化している時間にメリハリをつけます。朝・昼・夜のボリュームバランスは「4:2:4」を目安にしましょう(例えば朝食と夕食はやや多めで昼食は軽めにするイメージです)。もし夜が遅くなってしまう場合は、夜の食事量をさらに軽く調整します。リズミカルな食事習慣は腸の活動リズムを整え、ひいては自律神経のリズムも安定させます。
- 食物繊維をたっぷり摂る: 腸内環境を整えるには食物繊維が欠かせません。食物繊維には水に溶けにくい「不溶性」と、水に溶けやすい「水溶性」の2種類があります。不溶性は水分を吸収して便のかさを増やし腸を刺激してくれるもので、穀類や豆類、野菜などに多く含まれます。例えばバナナ、ゴボウ、さつまいも、玄米、豆類などです。逆に水溶性食物繊維は便をやわらかくして排出を促し、腸内で善玉菌のエサにもなります。海藻類(ノリやコンブ)、オクラや里芋、なめこなどのネバネバ食材、押し麦や雑穀、ニンジンなどに豊富です。難しく考える必要はなく、海藻・野菜・きのこ・果物など食物繊維が多い食材をバランスよく毎日の食事に取り入れるよう意識しましょう。食物繊維は善玉菌を増やし、悪玉菌の繁殖を抑えて腸内環境を改善してくれます。
- 発酵食品を毎日取り入れる: ヨーグルトや納豆、味噌、醤油、ぬか漬け、キムチ、チーズといった発酵食品には乳酸菌をはじめとする有用菌が含まれています。これらは腸に入ると善玉菌として働いたり、既存の善玉菌のエサになって悪玉菌の増殖を抑えてくれます。乳酸菌にも種類が多く、人によって合う・合わないがありますが、自分に合ったヨーグルトを見つけて毎日食べるのも良い習慣です。納豆や味噌汁一杯にも生きた菌がたくさん含まれていますから、ぜひ日々の献立に発酵食品を一品プラスしてみましょう。特に味噌汁は発酵食品(味噌)と食物繊維(野菜や海藻)を同時に摂れる優秀なメニューですので、1日1杯を目標にすると腸にとても良いです。
- 腸を動かす工夫: 朝起きてすぐのコップ一杯の水は前述のとおり腸を刺激し、副交感神経を目覚めさせます。また便秘がちな人は、朝晩1回ずつお腹のマッサージをしてみましょう。おへその周りをのの字にゆっくり3分間マッサージすると腸が刺激されて動きやすくなります。加えて腰回しや体をひねるストレッチなども腸への刺激になります。そして便通を良くする食べ物として、オリーブオイルが一役買います。スプーン1杯のオリーブオイルをヨーグルトに混ぜたり、焼いたリンゴにはちみつとオリーブオイルをかけて食べるなど、工夫して取り入れてみましょう。適度な油分は腸を潤滑にし、排便を促します。
- アルコールやカフェインとの付き合い方: 前述のように過度のアルコールは自律神経を乱しますが、適量であればリラックス効果も期待できます。お酒を飲む際は量を控えつつ水分とおつまみを摂ることを忘れずに。またコーヒーは1日2~4杯程度までであれば自律神経を乱す心配はあまりありません。むしろ朝のコーヒー習慣は交感神経を適度に刺激して頭をスッキリ目覚めさせてくれるでしょう。ただし寝る直前のカフェインは避け、就寝3~4時間前以降は控えた方が無難です。緑茶や紅茶も同様ですので、夜はノンカフェインのハーブティーなどに切り替えると安心です。
- 「美味しく食べる」ことも大事: 健康のためとはいえ、あまりに味気なくストレスのたまる食事をしては本末転倒です。食事は心の栄養でもあります。「これを食べると元気が出る」「美味しくて幸せ」と思えるメニューをバランスの中に取り入れましょう。栄養ばかりに気を取られて「まずいけど体に良いから…」と我慢して食べるのはかえってストレスになり、自律神経にはマイナスです。美味しく楽しく食べてこそ、副交感神経も十分に働いて消化も促進されます。
- 炭水化物とタンパク質のとり方: 主食となるご飯やパンなどの炭水化物はエネルギー源として大事ですが、食べ過ぎると午後の眠気につながったり血糖値の乱高下を招きます。1日3食のうちどこか1食でしっかり炭水化物を摂り、他の食事では控えめにするなど、自分の生活リズムに合わせて調整しましょう(例えば朝と昼は軽めに、夜だけお米を一膳食べる、などでもOKです)。また自律神経の神経伝達物質の材料となるタンパク質もしっかり摂る必要があります。肉や魚、卵、大豆製品など良質なタンパク源を毎食意識して取り入れましょう。ただし動物性タンパク質には脂肪分も多いため、抗酸化作用のある野菜や果物を一緒に食べる工夫をするとベターです。例えば肉料理にはニンジンやブロッコリーなどβカロテン豊富な野菜を添える、レモンを絞ってビタミンCを補給する、食後にベリーや柑橘類を食べる、赤ワインを適量楽しむ(ポリフェノール補給)などです。こうした抗酸化成分は脂質による酸化ダメージを和らげ、血流を保つ助けになります。
- 貧血にも注意: めまいや疲労感、動悸などがあると「自律神経が乱れているのかな?」と思いがちですが、貧血でも似た症状が起こります。特に中高年の女性は鉄分不足による貧血が隠れていることも。血液検査で貧血が指摘されたら、鉄剤や鉄分サプリメントでの補給も検討しましょう。貧血が改善すると結果的に自律神経の不調も和らぐケースがあります。
- ランチ後の眠気対策: 昼食後に強い眠気に襲われる…という方は、ランチのとり方を工夫してみましょう。ポイントは食前のコップ一杯の水とよく噛んで腹八分目です。食べる前に水分をとることで適度な満腹感が得られ、食べ過ぎ防止になります。また食事中はよく噛むことで満腹中枢が刺激され、結果的に「ちょうどいい量」で満足できます。満腹になりすぎないことで、食後の血糖値急上昇やその反動による眠気を防げます。どうしても午後眠い時は無理に我慢せず、15分ほどの短い昼寝(パワーナップ)をとるのも効率的です。
- 間食で上手にリフレッシュ: 間食には、チョコレートやナッツ類がおすすめです。高カカオチョコレートに含まれるカカオポリフェノールは抗酸化作用があり、美容にも良いとされています。またカカオ由来の成分は肌のターンオーバー(生まれ変わり)を促進するとの報告もあります。ナッツはビタミンや良質な脂肪を含み、少量でも満足感が高いので間食に適しています。逆にスナック菓子や甘いジュースは血糖値の乱高下を招きやすく自律神経の乱れにつながるため控えめに。どうしても甘いものが欲しいときは果物など自然な甘みのものを選びましょう。またガムを噛むことも手軽にできるリフレッシュ法です。噛むリズムが脳を刺激して眠気覚ましになりますし、唾液の分泌が副交感神経を刺激してリラックス効果も期待できます。
自律神経を整えるメンタル習慣
次にメンタル面から自律神経を整える方法です。冒頭で触れたように、人間関係のストレスは自律神経の乱れの最大要因とも言われます。心の持ちようやストレス対策次第で、自律神経の状態は大きく変わります。日々を穏やかな気持ちで過ごすために、以下のポイントを意識してみましょう。
- 「人は人、自分は自分」: 他人は他人、自分は自分――ときにはこう割り切ることも大切です。周囲と自分を比較してクヨクヨしたり、人の言動に必要以上に振り回されたりしないよう意識しましょう。真面目で責任感が強い人ほど周囲の影響を受けやすいですが、適度に「放っておく」ことも心の健康には必要です。自分は自分、とマイペースでいることが自律神経の安定につながります。
- ネガティブな空気に飲まれない: 自律神経の乱れは不思議と人に伝染すると言われます。イライラ、ピリピリした空気の中にいると自分まで交感神経が刺激されてソワソワしてきてしまうもの。できるだけ日頃から穏やかな雰囲気の人と付き合い、職場でもストレスを過度に抱えている人とは適度な距離をとるようにしましょう。自分自身が落ち着いて安定していることで、周囲へ悪影響を及ぼさないことにもつながります。
- 心を落ち着けるルーティン: コーヒーをゆっくり味わう時間、好きなアロマで深呼吸する時間、夜の読書タイムなど、自分なりのリラックス習慣を持ちましょう。「これをするとホッとする」というルーティンがあると、スイッチの切り替えが上手になります。できれば毎日同じタイミングで取り入れると習慣化しやすいです。例えば朝起きてすぐ窓を開け深呼吸を2~3回する、夜寝る前にハーブティーを飲む、といった小さなことでもOKです。
- 今この瞬間に集中: 不安やストレスで頭がいっぱいになるとき、人はしばしば「次どうしよう」「明日大丈夫かな」と未来のことを考えすぎてしまいます。そんなときこそ**「今、ここ」に意識を戻す**ようにします。今やるべきことに集中し、一つずつこなしていきましょう。特に大事な用事や難しい仕事は朝のうちに済ませてしまうのがおすすめです。朝は交感神経が程よく高まって集中力があり、意志力も強い時間帯です。逆に夜に近づくにつれ意志力も低下するので、翌日に回すとストレスを引きずってしまうことも。思いついた用事や気になることはメモを書いて整理し、優先順位をつけて取り組むだけでも気持ちが落ち着きます。
- 怒りを感じたらスローダウン: もし何かに腹が立ったりイライラが爆発しそうになったときこそ、あえて動作や話し方のスピードを落としてみるのが効果的です。ついカッとなって早口でまくしたてたり強い口調になってしまうと、交感神経が一気にヒートアップして心拍数も上がり、自分でも制御しにくくなってしまいます。そんなときは一旦深呼吸し、落ち着いてゆっくり話すことで自分の自律神経に「大丈夫」と言い聞かせるイメージです。ゆっくり動く人を見るとこちらも安心するものですよね。それと同じで、自分自身に対してもあえてスローペースになることで興奮を鎮める効果があります。
- ため息は我慢しない: ストレスがたまると出てしまう「はぁー…」というため息、周りに失礼かなと遠慮していませんか? 実はため息をつくこと自体は悪いことではありません。大きく息を吐くと新鮮な空気をたくさん吸い込み直すことになり、結果として酸素供給量が増えて脳や体がリフレッシュします。緊張状態では呼吸が浅くなりがちなので、意識的にため息をつく(深呼吸する)ことで副交感神経が働きリラックスできるのです。周囲に人がいる場ではこっそり深呼吸をしてみたり、トイレに立って個室でため息をつくのも良いでしょう。
- 音楽の力を借りる: 音楽も自律神経に影響を与えると言われます。特にテンポやビートが一定で音域の狭い曲は心地よく感じやすく、心拍も安定させてくれます。リズムがガチャガチャ変化する曲よりも、単調なくらい安定したリズムの曲の方が作業用BGMなどにも適しています。好きなジャンルで構いませんので、自分がリラックスできるお気に入りの音楽を見つけてみましょう。ロックが好きな人ならスローテンポのロック、クラシックが好きならバロック音楽など、聴くとホッとできる曲が1曲あるだけでも気分転換になります。
- 笑顔とユーモアを忘れずに: 緊張しているときや疲れているときこそ、意識的に笑顔を作ってみましょう。作り笑いでも脳は「楽しいのかな?」と錯覚してリラックスホルモンが出ると言います。また誰かとの会話でユーモアを交えてみたり、面白い動画を見るのも◎。笑うことは腹式呼吸にもつながり、副交感神経が優位になります。日々の暮らしの中で小さな笑いを見つける習慣が、自律神経の安定剤になるのです。
- 身の回りを整頓する: 部屋やデスクが散らかっていると、それだけで無意識にストレスになります。反対にスッキリ片付いた空間にいると気持ちまで整ってきますよね。忙しいとつい後回しにしがちですが、散らかったものは片付ける、要らないものは思い切って処分するなど、定期的に身の回りをリセットしましょう。部屋の空気を入れ替えたり、お気に入りのインテリアを飾るのも気分転換になります。環境が整うと心にもゆとりが生まれます。
- タッピングでリラックス: 簡単にできるリラクゼーション法として「タッピング」もおすすめです。やり方は、手の甲や頬、頭などをリズミカルにトントンと指先で優しく叩くだけ。人差し指・中指・薬指の3本を使い、肌に触れるか触れないかくらいのごく弱い刺激で一定のリズムでトントンします。例えば不安なときは胸のあたりをトントンしたり、緊張しているときは頬をポンポン叩くと、不思議と気持ちが落ち着いてきます。これはリズム刺激が副交感神経を刺激し、過剰な興奮を鎮めてくれるためと考えられています。場所を選ばず静かにできるので、人前でもこっそり試せます。
- 「3行日記」で前向きに: 一日の終わりに短い日記をつける習慣もメンタルケアに有効です。おすすめなのが「3行日記」。1行目に「今日うまくいかなかったこと(失敗したこと)」、2行目に「今日一番感動したこと(良かったこと)」、3行目に「明日の目標」を書きます。ネガティブ→ポジティブ→未来への意欲、という順番で書くことで気持ちの切り替えがスムーズにできます。嫌な出来事を書いて吐き出し、良い出来事を書いて感謝し、最後に明日の目標を書くことで前向きな気持ちで一日を終えられます。たとえ失敗があっても引きずらずに済み、翌朝を爽やかな気分で迎えられるでしょう。
自律神経を整える運動習慣
最後に運動による自律神経ケアです。運動といっても激しいトレーニングは必要ありません。日常に軽い運動を取り入れるだけで血行が促進され、ストレス発散にもなり、自律神経のバランス維持に役立ちます。
- 「ながら運動」を取り入れる: デスクワーク中心の方は、1時間に一度は席を立って体を動かしましょう。トイレ休憩ついでに屈伸運動(スクワット)を5回してみる、コピーを取るついでに腕を回す、といったながら運動でOKです。筋肉を動かすと血流が良くなり、交感神経と副交感神経のバランス調整にプラスになります。特に太ももの大きな筋肉を使うスクワットは効果的で、眠気覚ましにもなります。
- 朝晩のストレッチ: 朝起きたときと夜寝る前に、それぞれ5分でもいいのでストレッチを行いましょう。朝は寝ている間にこわばった筋肉を伸ばすようにゆっくり体をほぐします。軽いストレッチは交感神経にスイッチを入れ、「さあ活動するぞ」という準備運動になります。逆に夜は深呼吸しながらゆっくり筋を伸ばし、体をリラックスさせます。肩や首、背中のストレッチをすると副交感神経が優位になり、眠りに入りやすくなります。ストレッチの後は白湯やハーブティーを飲んで体を温めるとさらに効果的です。
- 階段を使う: 日常生活の中でできる運動の定番が階段の活用です。エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うだけで、ふくらはぎや太ももの筋肉が刺激され血流アップにつながります。階段を上ると一時的に心拍数が上がりますが、これは交感神経が刺激されている状態。しかし階段を上り終えて少しするとスーッと呼吸が整ってきますよね。これは副交感神経が働いて心拍を落ち着かせているサインです。日常の中で交感神経→副交感神経への切り替え練習をするつもりで、階段昇降を取り入れてみましょう。
- 姿勢を正す: 実は姿勢も自律神経に影響を与えます。猫背で背中が丸まっていると肺が圧迫され呼吸が浅くなり、交感神経が優位な状態に傾きがちです。反対に背筋を伸ばして顎を軽く引いた良い姿勢は、それだけで呼吸が深くなり副交感神経が働きやすくなります。また姿勢が良いと血流やリンパの流れも向上します。日常的に自分の姿勢に意識を向け、こまめに正す習慣をつけましょう。壁にかかと・お尻・肩甲骨・後頭部をつけて立つ練習をすると、正しい姿勢の感覚がつかみやすいです。
- ウォーキングを習慣に: 手軽で続けやすい有酸素運動としてウォーキングは非常におすすめです。無理のないペースで構いませんので、1日15~30分を目安に歩く時間を作ってみましょう。通勤通学の一部を徒歩にする、犬の散歩を日課にするなど工夫してみてください。特に夕食後の軽いウォーキングは消化を助け、副交感神経を高めてくれるので一日の締めくくりに最適です。歩くときは季節の景色を楽しんだり、好きな音楽を聴いたりしてリラックスしながら歩くと良いでしょう。夜道では安全に気をつけ、反射材をつけるなど工夫してくださいね。
- 疲れた日こそ軽い運動を: 「今日はなんだか疲れたな…」という日ほど、少しだけでいいので体を動かしてみましょう。ソファでだらだら過ごすより、ゆっくり近所を散歩したりストレッチをした方が、実は夜よく眠れて疲労回復につながります。「疲れているから今日は早く寝よう」と布団に入っても、日中まったく動かないと体は十分に疲れておらずかえって寝付けないこともあります。適度に体を動かし心地よい疲労感を得ることが、深い睡眠(=副交感神経優位の時間)を誘うのです。ただし激しい運動は逆効果なので、あくまで無理のない範囲で行いましょう。
まとめ
自律神経の乱れは、現代を生きる私たちにとって避けがたい部分もあります。ですが毎日の生活の中で少しずつ習慣を見直すことで、乱れた自律神経を整えることは十分可能です。今回ご紹介したように、規則正しい生活リズムや腸に優しい食生活、ストレスを溜めにくいメンタルの持ち方、そして適度な運動を心がけることで、自律神経は少しずつ安定していきます。
自律神経が整えば心身の不調が軽くなり、気分も前向きになります。ぐっすり眠れて朝スッキリ目覚める日が増えれば、日中の活力も湧いてきます。さらに血流が良くなることで肌のツヤや髪の状態も改善するなど、美容面での嬉しい変化も期待できます。何より、自律神経が安定するとストレスに強くなり、多少のことでは疲れにくくなるでしょう。
どれも今日から実践できることばかりです。一度に完璧にやろうとせず、できそうなことからぜひ取り入れてみてください。自律神経は目に見えませんが、あなたの毎日を陰で支える名脇役です。上手にケアしてあげて、加齢に負けない元気な体と心を手に入れましょう。毎日の積み重ねが、きっと明るく健やかな未来につながっていきます。自律神経を整えて、いつまでも若々しくハツラツと過ごしてくださいね。
参考書籍
小林弘幸著「眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話: 自律神経のギモンを専門医がすべて解説! 」
小林弘幸著「結局、自律神経がすべて解決してくれる」